転職

薬局がM&Aされたら薬剤師はどうなる?|吸収合併を経験した私のリアル(給与・昇給・その後)#15〜18

「うちの薬局、大手グループに買収されるらしい」

ある日、突然そう告げられたら——あなたはまず、何が気になりますか。給料? 働き方? それとも、辞めるべきかどうか?

私は実際に、勤めていた調剤薬局グループが大手薬局グループに吸収合併(M&A)された経験があります。結論から言うと、私はその後転職し、年収は倍以上になりました

ネットで「薬局 M&A」と調べても、出てくるのは仲介会社の記事ばかり。そこで働く薬剤師がどうなるのかを書いた情報は、ほとんどありません。今日はその中身を、当事者として正直に書きます。

結論:働き方は変わらなくても、"給与の伸びしろ"が消えることがある

先に結論です。私のケースで起きたのは、これでした。

  • 勤務時間・働き方 → 変わらなかった(ここは約束通り維持された)
  • 給与制度 → 大手の基準に統一された
  • その結果、昇給がほぼなくなった

ポイントは「今が下がる」のではなく「これから上がらなくなる」という点です。目の前の給料は減っていないので、その場では気づきにくい。でも生涯で見れば、これは大きな差になります。

M&Aで実際に起きたこと(私のケース)

① 事前の説明はなかった。突然の通知だった

説明会も、事前の相談もありませんでした。ある日いきなり「合併します」という通知。しかも口頭のみで、詳しい説明はなく、変更内容だけが淡々と伝えられました。

今思えば、ここが最初の分岐点でした。大事な条件変更が「口頭だけ」で流れていく——この時点で、会社の姿勢はある程度見えていたのだと思います。

② 「勤怠は維持。でも昇給は……」

提示された条件は、ざっくり言えばこうでした。

「今の勤怠体制はそのまま維持します。ただ、昇給は……」

働き方が守られたのはありがたい。でも、昇給がなくなるというのは、実質"レベル上限に到達した"のと同じです。何年頑張っても、そこから先に進めない。

③ いちばん大きかったのは「給与制度の統一」

これが本質でした。

それまでの職場は、経営トップの裁量で給与が決まる仕組みでした。良くも悪くも属人的で、頑張りが反映される"旨み"があった。

ところが大手に吸収されると、給与は大手グループの制度に統一されます。結果、給与水準が「大手の新卒と同じ」ラインに揃えられ、そこに昇給なしが重なった。——これは、経験を積んだ薬剤師にとってかなり厳しい条件です。

M&Aは「制度が変わる」イベントです。そして制度が変わるということは、これまで自分が評価されてきた仕組みが消えるということでもあります。

その後、職場で何が起きたか

私は、先頭を切って辞めました。

その後、先輩から聞いた話では——若い人から順に、次々と辞めていったそうです。

理由は明確で、給与が大手の新卒と同水準になり、しかも昇給がない。これから何十年も働く若手ほど、その条件は割に合わないからです。M&A後に人が抜けるのは、待遇への不満というより"将来の計算が合わなくなる"からなのだと思います。

「M&Aします」と言われたら、まずやるべき3つ

  • ① 変更内容を「書面」でもらう
    口頭だけで流されないこと。あとで「言った・言わない」になります
  • ② 給与・昇給・退職金・評価制度が"どう変わるか"を確認する
    今の月給だけ見ても意味がありません。見るべきは「これから上がるのか」です
  • ③ 情報収集だけ、先に始めておく
    転職するかは後で決めればいい。選択肢を持っておくこと自体が心の余裕になります

特に②が大事です。M&Aの説明は「今の待遇は維持します」で終わりがちですが、維持されるのは"現在地"だけで、"これから"は別物だからです。

転職活動は、最初うまくいかなかった

私はすぐに薬剤師専用の転職サイトに登録しました。ところが正直に言うと、最初はまったく決まりませんでした。

今の条件を上回る職場がなかなか見つからず、何件か面接を受けても、どれもピンとこない。迷走していた時期です。

突然のスカウト電話。でも"条件が良すぎて"怖くなった

そんなある日、知らない番号から電話がかかってきました。出てみると、同じ地区にある別の薬局の薬剤師さんでした。

「単刀直入に聞きます。先生、今、転職活動中ですか?」

なぜバレているのかと驚きましたが、正直に答えると「うちのグループの人事と一度話してみませんか」と。数日後、近くの喫茶店で人事の方と面談しました。

そこで提示された条件が、これです。

  • 完全週休2日
  • 年収650万円
  • 家賃手当 年間80万円

……正直、嬉しさより先に「怖さ」が来ました。条件が、良すぎたからです。

転職サイトを毎日見ていた身からすると、この水準はまず出てきません。うますぎる話には、たいてい理由がある。人が続かない職場なのかもしれない。何か裏があるのかもしれない。そう思いました。

だから「ハローワーク」で会社の裏を取りに行った

そこで私が取った行動が、これです。

ハローワークに行って、その会社について職員さんに直接聞きました。

これは意外と知られていませんが、ハローワークの職員さんは、地域の企業の"生の情報"を持っています。求人票には出てこない、こんなことまで教えてもらえました。

「特に怪しい出入りはないですね。離職率も低くて、環境は安定していますよ」

この一言で、一気に不安が消えました。ちなみにその会社の求人票は、当時ハローワークには出ていませんでした。それでも「どんな会社か」は教えてもらえたのです。

転職サイトのエージェントは、当然ですが紹介したい立場です。一方ハローワークの職員さんは、そこに利害がない。だからこそ、中立的な情報が聞ける。これは実際にやってみて、いちばん価値を感じたことでした。

好条件のスカウトが来たら、ハローワークで裏を取る。これが、私が転職活動でいちばん役に立った方法です。

唯一のデメリットは「距離」。それでも決めた理由

ひとつだけ問題がありました。勤務地が自宅から片道およそ1時間半。通うというより、もはや遠征です。

「引っ越すしかないかなぁ……」とこぼした私に、妻が一言。

「いいよ、引っ越そ?」

即決でした。そしてこの決断が、結果的に大正解になります。条件が本当に良ければ、住む場所は変えていい。家族が味方でいてくれたことが、いちばん大きかったです。

結果:年収は倍以上になりました

M&Aをきっかけに動いた結果、私の年収は450万円から900万円へ——倍以上になりました。あのとき「まあ、様子を見るか」と留まっていたら、今の生活はありません。

(年収を倍にした具体的な流れは「転職で年収を倍以上にした方法」の記事に詳しく書いています)

まとめ:後悔はない。動くなら、早い方がいい

M&Aされた職場を離れたことに、後悔は一切ありません。そして当時を振り返って言えるのは、ただ一つです。

「すぐ行動すること」

辞めるかどうかは、あとで決めればいい。でも情報を集め始めるのは、今日からでもできます。私の職場では、迷っている間に条件が固まり、若手から順に去っていきました。早く動いた人ほど、選べる手札が多かった——それが実際に見た現実です。

そしてもし、うますぎる好条件に出会ったら。飛びつく前に、ハローワークで裏を取る。この一手間が、あなたを守ってくれます。

※M&Aは合併・事業譲渡など形態によって雇用契約の扱いが異なります。これは私個人の経験談であり、労働条件の詳細については必ず書面で確認し、不安な場合は労働基準監督署や専門家にご相談ください。

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