
先日、自宅の近くで大きな地震があった。幸い家族に大きなけがはなかったけれど、薬剤師として、そして小さな子どもを持つ親として、「備えの甘さ」を思い知らされた。
防災の備えというと、水・食料・懐中電灯……そのあたりを思い浮かべる人が多いと思う。でも、意外とすっぽり抜け落ちがちなのが「薬の備え」だ。持病のある人や、小さな子どものいる家庭では、ここが文字どおり“命綱”になる。
この記事では、実際に被災した薬剤師が「本当に困ったこと・役立ったもの」、そして今日からできる“くすりの防災”を、正直にまとめておく。
目次
まず、被災して「困ったこと・役立ったもの」
スーパーとコンビニから、真っ先にパンとおにぎりが消えた。次に売り切れたのが、モバイルバッテリー・乾電池・懐中電灯といった電化製品。停電に備えて、みんな一斉に買いに走ったのだと思う。
逆に、助けられたのが水だった。実は、ふるさと納税の返礼品でミネラルウォーターを箱買いして備蓄していて、それがそのまま防災ストックになっていた。買いに走らずに済んだのは、本当に大きかった。
痛感したのは、「災害が起きてから買いに行っても、もう遅い」という当たり前の事実。特別な防災グッズを揃えるより、“日常のストックを少し多めに”しておく方が、ずっと現実的で強い。
【本題】薬剤師が声を大にして言いたい「薬の備え」
水や食料の備蓄は、大手の防災サイトにもたくさん書いてある。だからここでは、薬剤師の私だからこそ伝えたい「薬の備え」に絞る。ここは、本当に見落とされがちだ。
① お薬手帳は「すぐ持ち出せる場所」に(+アプリも)
災害時、お薬手帳があると「いつも飲んでいる薬」が一目で分かり、避難先の医療者からも同じ薬を再び出してもらいやすくなる。過去の大きな災害でも、“お薬手帳があった人”はスムーズに薬を再開できたと言われている。紙をなくすのが不安なら、スマホの電子お薬手帳アプリを入れておくと安心。スマホひとつで薬の記録を見せられる。
② 持病の薬は「最低1週間分」の予備を
災害時は、薬局も病院も一時的に機能が止まる。残りが2〜3日というタイミングで被災すると、一気に苦しくなる。受診のたびに“常に1週間分の余裕”が残るよう、少し早めの受診や残薬管理を意識しておきたい。
※自己判断で薬をやめたり、量を変えたりするのは危険です。調整は必ず薬剤師・医師に相談を。
③ 市販薬の“常備セット”を用意する
- 解熱鎮痛薬(大人用・子ども用)
- 胃腸薬・整腸剤
- 傷の消毒・絆創膏
- アレルギー・かゆみ止め
- 普段使っている目薬や湿布など
避難所ではすぐに手に入らないことも多い。普段使うものを、少し多めに常備しておくと安心だ。
④ 家族全員分をリスト化(子ども・高齢者は特に)
子どもの薬は体重で量が変わるし、高齢の家族には欠かせない常用薬があることも。「誰が・何を・どれだけ」飲んでいるかを家族でリスト化しておくと、いざという時に慌てない。
⑤ かかりつけ薬剤師・薬局を持っておく
普段から相談できる薬剤師がいると、「この薬、切れそうだけどどうすれば?」を災害時にも相談できる。顔の見える関係は、非常時にこそ効いてくる。
そして、覚えておいてほしいこと。大きな災害時には、お薬手帳や薬の名前がわかれば、処方箋がなくても特例で数日分の薬を受け取れる場合がある(過去の災害で実施されてきた)。だからこそ、“自分の薬の名前が分かる状態”=お薬手帳が、何より大事になる。
今日できる、たった3つの“ちょい足し”
- 水・食料は「ローリングストック」——普段使いしながら、少し多めに買い足しておく
- お薬手帳を1か所にまとめる+電子お薬手帳アプリを入れる
- 市販薬セットと、持病の薬の予備をチェックする
完璧な防災リュックを一気に揃えようとすると、続かない。それより、“日常にちょっと足す”方が、続くし、いざという時に本当に効く。
まとめ
災害は、「起きてから」では間に合わない。でも、身構えすぎなくていい。今日、水を1箱、お薬手帳を1か所に——それだけでも、家族の生存確率は確実に上がる。
薬剤師として、そして親として、今回あらためて思った。「備えは、家族への一番地味な、でも一番効くプレゼントだ」と。
いざという時、救急車を呼ぶか迷ったときの流れや、夜間の体調不良への向き合い方は、こちらの記事も参考にしてほしい。
※この記事は一般的な防災情報です。持病やお薬のことは、かかりつけの薬剤師・医師にご相談ください。
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