
妻の実家に帰省したとき、初めて「海亀の放流」に参加した。
孵化したばかりの小さなウミガメを、みんなで海へ還す——名前は知っていたけれど、実際にこの手でやるのは初めてだった。
目次
バケツいっぱいの、小さな命
会場に着くと、青いバケツの中に、手のひらほどの小さな亀が何十匹もいた。黒くて、まだ体に砂をつけていて、みんな必死に足を動かしている。
「わぁ、いっぱいいる!」と息子。この小さな体で、これから広い海を生きていくのか——そう思うだけで、少し胸が熱くなった。

手のひらに乗せた、命の重さ
順番が来て、一匹を手のひらにそっと乗せる。想像より、ずっと軽い。でも、必死に手足を動かすその力は、たしかに「生きよう」としていた。
この小さな命は、これから何の助けもなく、たった一匹で海へ出ていく。親もいない、道しるべもない。ただ、本能だけを頼りに。

砂浜を、海へ向かって
合図とともに、砂の上にそっと置く。亀たちは迷わず、波打ち際へ歩き出した。小さな足で砂をかいて、転びそうになりながら、それでもまっすぐ海へ。

その後ろ姿が、息子と重なった
波に向かって進んでいく、小さな後ろ姿。それを見ていたら、なぜか——隣ではしゃぐ息子と、重なって見えた。
いつか、この子も。親の手を離れて、自分の海へ歩いていくんだろう。そう思ったら、嬉しいような、少し寂しいような、不思議な気持ちになった。
今はまだ、こうして隣で一緒に亀を見ている。でも、この時間は永遠じゃない。当たり前に思っているこの瞬間が、実はすごく貴重なものなんだと、小さな亀の後ろ姿が教えてくれた。

だから、今を大事にしたい
私が働き方を整えたり、お金のことを考えたりしているのは、突き詰めると「家族とのこの時間を、少しでも多く持つため」だ。
子どもが自分の海へ歩いていくその日まで、一緒に過ごせる時間は、思っているより短いのかもしれない。だからこそ、目の前の"今"を、ちゃんと味わっていきたい。
小さな亀たちが、無事に大きな海を生き抜きますように。そしていつか息子が巣立つときも、笑って送り出せる自分でいられますように。
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